黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
 真剣に話しているというのに、わずかに顔をうつむかせた彼がくすりと笑う。
 おかしなことを口走ってしまっただろうかと不安になりつつ、彼の態度が不快で眉間にしわを寄せた。

「……そういう、真面目で気の強そうな一面は悪くない」

「え?」

 顔を上げた宇和島さんは、それまでの健やかな表情を脱ぎ捨ててニヤリ笑った。

「依都は、俺を信じられないんだろ?」

「え、ええ。っていうか、その口調……」

 彼を信じられないもなにも、端から疑いしかない。
 唐突に態度を変えられて、自分はなにかを間違えたのかと困惑する。

「プライベートでまで、あんな堅苦しい振る舞いをしているわけがないだろ。依都も、あの男と話していたときのように楽にしてくれ」

 あの男とは?と考えて、大和だと気づく。私の周りにいる親しい男性など、彼くらいなものだ。

 この人は裏表がありそうだとは察していたけれど、こうも簡単に本性を見せられるとは思わなかった。

「依都の信頼を得るには、偽りの姿を見せていても仕方がない。なんとしても俺は、依都がほしいからな」

「ほ、ほしい!?」

 驚いて声をあげた私に、宇和島さんはなにを今さらとあきれ顔をする。

「最初からそう言っている」

「え?」「は?」とひとりでつぶやく私を、彼はあきらかに楽しそうに見ていた。

「じょ、冗談では?」

「そんなわけないだろ」

 フンっと笑いながら、宇和島さんが即座に否定する。
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