黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
「私を利用したい、とか?」
ついそう漏らすと、彼は顔をしかめた。
「まあ、仕事の話が邪魔をしているんだな」
そう言ってうなずく宇和島さんを、呆然としながら見つめる。
「支配人らを説得するために意図的に仕事の話もしたとはいえ、依都が疑うのも当然か」
そう言ってなにやら思案した彼は、再び私と視線を合わせてきた。
「依都が俺を疑っているのはわかった。だがどうしても欲しいものを手に入れるのに、手段を選ぶつもりはない。気持ちは後からでもかまわないからな」
理解が追いつく前にぽんぽんと言葉を返されて、頭がパンクしそうだ。
口角を片方だけ上げた彼の笑みに、なにを企んでいるのかと背中を冷たい汗が伝う。全力で椅子の背もたれに張り付いて、できうる限り彼との距離を開けた。
私とは対称的に、宇和島さんは足を組んで余裕たっぷりにこちらを見つめている。
「依都が俺との結婚を受け入れるのなら、先日提案した糸貫庵の処遇は必ず実行しよう。加えて、若女将の再雇用を約束する。もちろん、研修の受講や語学など必要な知識は身につけてもらうという条件はあるが」
「由奈を?」
「ああ、そうだ。俺の立場なら、それくらいの権限はある」
糸貫庵については、宇和島グループが改修から経営まですべてを担うと話していたくらいだ。彼の言う通り、ある程度はこの人の思い通りに進められるのかもしれない。
権力を盾にしたやり方に、唇を噛みしめる。
けれど……と、これまで自分が目にしてきた妹の姿を思い浮かべた。
若女将として、由奈は学生の頃から奮闘してきた。ケガをした今くらいゆっくりすればいいのに、経営学の本を読むなど糸貫庵のために役立つ知識を身につけようとがんばっている。
糸貫庵を手放せば、あの子の努力が無駄になってしまう。
今後も、同業種の仕事が見つかるとは限らない。そもそも他業種だとしても、暮らしていけるだけの給料を得られる職に就ける保証はない。
ついそう漏らすと、彼は顔をしかめた。
「まあ、仕事の話が邪魔をしているんだな」
そう言ってうなずく宇和島さんを、呆然としながら見つめる。
「支配人らを説得するために意図的に仕事の話もしたとはいえ、依都が疑うのも当然か」
そう言ってなにやら思案した彼は、再び私と視線を合わせてきた。
「依都が俺を疑っているのはわかった。だがどうしても欲しいものを手に入れるのに、手段を選ぶつもりはない。気持ちは後からでもかまわないからな」
理解が追いつく前にぽんぽんと言葉を返されて、頭がパンクしそうだ。
口角を片方だけ上げた彼の笑みに、なにを企んでいるのかと背中を冷たい汗が伝う。全力で椅子の背もたれに張り付いて、できうる限り彼との距離を開けた。
私とは対称的に、宇和島さんは足を組んで余裕たっぷりにこちらを見つめている。
「依都が俺との結婚を受け入れるのなら、先日提案した糸貫庵の処遇は必ず実行しよう。加えて、若女将の再雇用を約束する。もちろん、研修の受講や語学など必要な知識は身につけてもらうという条件はあるが」
「由奈を?」
「ああ、そうだ。俺の立場なら、それくらいの権限はある」
糸貫庵については、宇和島グループが改修から経営まですべてを担うと話していたくらいだ。彼の言う通り、ある程度はこの人の思い通りに進められるのかもしれない。
権力を盾にしたやり方に、唇を噛みしめる。
けれど……と、これまで自分が目にしてきた妹の姿を思い浮かべた。
若女将として、由奈は学生の頃から奮闘してきた。ケガをした今くらいゆっくりすればいいのに、経営学の本を読むなど糸貫庵のために役立つ知識を身につけようとがんばっている。
糸貫庵を手放せば、あの子の努力が無駄になってしまう。
今後も、同業種の仕事が見つかるとは限らない。そもそも他業種だとしても、暮らしていけるだけの給料を得られる職に就ける保証はない。