黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
 さっきから私の言い分を先回りするように阻まれて、話の流れを誘導できない。なんとか自分が主導権を握りたくて、どうするべき必死に考える。

「糸貫庵が再オープンするまで、こ、子どもを作る気はない、というか……と、とにかく、寝室は別でお願いします!」

 歯切れが悪いなりに、なんとか言いきった。

 交際経験なんて皆無の私には、親密な関係を直接的な言葉にするのも気恥ずかし。
 ここまで言ったのだから私の主張は伝わったはずだと信じて、熱くなった顔をうつむかせた。

「対外的には良好な関係を装いますが、光毅さんは自由にしてかまいませんから。どこでどうされていても、私はいっさい文句を言わないと約束します」

 彼の方を見られないまま、一気にまくしたてる
 今後も楢村さんと親密な関係を続けてくれてかまわないと、わかってくれただろうか。

 珍しく口を挟んでこないのは、私なんかに言われた苛立ちからか。それとも都合がいいと、さらに自分に有利な条件を引き出す算段をしているのか。

 そうしている間にさっき耳にした楢村さんの不安そうな様子がよみがえり、そうだ!と思いつく。お互いの目的が達成できた暁には、こちらから離婚を切りだせばいいのだと。
 対外的な理由は後で考えるとして、私から言いだすのなら彼に対する世間の目もそれほど悪いものにならないはず。

 糸貫庵と由奈の立場が守られる上に、宇和島リゾートが好印象を残せたらお互いにWIN-WINになる。
 それを見届けて、彼との関係を清算する。うん、これを目指そう。
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