黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
ある日のこと。もう何回目かになる説明会で集まった面々を見回していたところ、和服姿の女性を見つけた。初めて参加する人だが、数日前に偶然見かけていたため誰であるかはすぐにわかった。
糸貫庵の支配人の孫のひとりである、広瀬依都。
彼女は都心に出て働いていると聞いていたが、この場にこの服装で現れた経緯を考えると気が重い。糸貫庵を守ろうと動きだしたのだと、容易に想像がついた。
本人の話を聞いて、ますます頭を抱えたくなる。旅館を守るために会社を退職したという並々ならぬ意気込みに、ため息しか出なかった。
後先考えず……いや。彼女としては真剣に考えたつもりなのだろう。けれど、あまりにも浅はかすぎる。
旅館を手放すことになったら、その後の生活はどうするつもりなのか。収入を得る見込みがあるようには、とても思えなかった。
見通しを持たないまま行動に移すなどありえない。そんな気持ちがつい口を突いて出そうになるが、なんとかのみ込んだ。
厄介事が増えた。浮かべた笑みの裏でうんざりしながら、それでもここで立ち止まることはできないと反対派の懐柔に努めた。
糸貫庵の支配人の孫のひとりである、広瀬依都。
彼女は都心に出て働いていると聞いていたが、この場にこの服装で現れた経緯を考えると気が重い。糸貫庵を守ろうと動きだしたのだと、容易に想像がついた。
本人の話を聞いて、ますます頭を抱えたくなる。旅館を守るために会社を退職したという並々ならぬ意気込みに、ため息しか出なかった。
後先考えず……いや。彼女としては真剣に考えたつもりなのだろう。けれど、あまりにも浅はかすぎる。
旅館を手放すことになったら、その後の生活はどうするつもりなのか。収入を得る見込みがあるようには、とても思えなかった。
見通しを持たないまま行動に移すなどありえない。そんな気持ちがつい口を突いて出そうになるが、なんとかのみ込んだ。
厄介事が増えた。浮かべた笑みの裏でうんざりしながら、それでもここで立ち止まることはできないと反対派の懐柔に努めた。