黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
 光毅さんに周辺の案内図を手渡されて、全容を掴む。

「左手に進めば遊園地、正面に進めば水族館がある。それから何年か前に映画の撮影に使われた場所も近く、その辺りは聖地と言われている。撮影地を目当てに訪れる人も多い」

 なるほどと、説明してくれている方向へ視線を巡らした。

「ここは空港からも近いし、直通のバスが出ている。すぐそこには駅もあるし、大型駐車場も完備されている。とにかく交通の便がいいんだ」

 再開発前には、温泉のある宿泊施設もあったという。当時とは経営者も形態も変わっているが、温泉施設は今でも営業している。

「オーシャンビューを楽しめる温泉だと、人気が高まっている。それから、ほら。キッチンカーが点在しているだろ? ご当地グルメを楽しめると好評だ」

 彼の言う通り、いくつかのキッチンカーが見えている。
 それぞれのエリアにつながるこの場所はたくさんのベンチが置いてあり、キッチンカーで購入したものを食べることができる。観光目的だけでなく、地元の人も立ち寄るのだという。

「まずはこの辺りを散策しながら、水族館へ行こうか」

 デート初心者の心に優しいプランにほっとする。

「あれ? 宇和島社長じゃないですか!」

 白を基調としたオシャレなキッチンカーの前を通りかかったタイミングで、店主の女性に声をかけられて足を止めた。
顔を覗かせていたのは三十代くらいの人だ。
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