黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
 相手が大和なら、からかわれたときは遠慮なく小突いたり言い返したりできた。でも、光毅さんにはそれができない。

 なにかをされてムッとすると同時に、どうしても胸がドキドキする。それは一緒に過ごした時間の差が原因なのか、それともなにか違う理由があるからか。

 館内の照明が絞られていたおかげで、熱くなった顔をみられなくて助かった。けれどその仄暗さが、ますます光毅さんの存在を意識させる。

 いまいち集中できないまま、気づけば館内をすべて見終えていた。

 再び外に出てキッチンカーを巡った後に、映画の撮影地にも訪れる。その道中では声こそかけられなかったが、光毅さんに気づいて会釈をするスタッフを何人か見かけた。それがなんだか誇らしくて、彼を狡猾な人だと決めつけてはいけないと感じた。

 車に乗り込み、少し離れた所にある今晩泊るホテルへ向かう。ディナーは館内のレストランを予約してくれているようだ。
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