聖女天使を苦しめた国に、天罰を
『ああ、よかった……。聖女天使が生まれたのは、私のせいではなかった……』
『この子はルイザ。伯爵家の跡取りとして育てるよ!いいね?』
『もちろん。これで、バズドント伯爵家の未来も安泰だ』

 セロンが生まれてから2年後。
 父は義母との間に生まれた妹が普通の人間であると知るや否や、大層可愛がった。
 彼にとって彼女は、大切な跡取り娘だ。
 一瞬でも外に出て神官に見つかろうものなら二度とこの家には戻れない自分とは異なり、妹は自由に動き回れる。
 それが羨ましくて仕方がなかった。

(どうしてあの子はよくて、わたしは駄目なの……?)

 幼いながらにズルいと羨むたびに、少女の心は醜い感情でいっぱいになる。
 それから5年後――悪夢が始まったのは、セロンが7歳の時だった。

『髪を結って!』

 ある時は妹に。

『ドレスを着せなさい!』

 そしてまたある時は、義母に。

『掃除!』
『洗濯!』
『食事!』

 事あるごとに地下牢へ甲斐甲斐しく足を運ぶ義家族は、セロンを召使のように扱った。
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