聖女天使を苦しめた国に、天罰を
(同胞と一緒なら。どんなにつらくて、悲しいことも。乗り越えられたかも、しれない。でも……)

 たった1人で代わる代わる彼女達の面倒を見るのに疲れ果てたセロンは、だんだんと疲弊していく。

(今よりもっと、傷つくのは……。嫌……。それって、わがまま、なの……?)

 内容を丸暗記するほど読み耽った、聖女天使について書かれた本を抱きしめた。

(こんな、生活……。一生なんて、続けられない……)

 いつか大空で純白の翼をはためかせる日を夢見て微睡む。

「セロン! ルイザに、忘れ物を届けに行きな!」

 そんな、ある日の夕暮れのこと。
 18歳になったセロンは地下室に飛び込んできた義母に腕を引っ張られ、困惑した様子で嫌がる素振りを見せる。

「で、も……っ。わたし……」
「聖女天使だか、なんだか知らないけどねぇ! 今日はルイザにとって、重要な舞踏会なのさ! この髪飾りがないと、20歳の誕生日を迎えた王太子を虜にできないよ!」

 だが――彼女はどうしても、義娘に忘れ物の届けさせたいようだ。
 どれほどセロンが拒んでも、無理やり外へ連れ出そうとする。
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