聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「俺の命は、パロニード辺境伯領に捧げる」

 その切っ先を上空に掲げた青年は人知れず静かに宣言すると、父の爵位を継ぐ。

 こうして――家族を失ったクロディオ・パロニードは、心を閉ざした。

(俺には、大切なものを作る資格がない)

 自らを律して、感情を殺す。
 ただひたすらに迫りくる敵を屠り続けたのは、領民達を守るためだった。

(聖女天使は、救えないが――。せめて、彼らだけは……)

 まだ若いクロディオがたった1人でできることなど、限られている。
 辺境伯は領民達の安全を最優先に考えて戦地で戦い続けた結果――少しだけ、やりすぎてしまったようだ。

「パロニード辺境伯は血も涙もない男だと言う話は、本当だな……」
「騎士を斬り伏せても、顔色一つ変えやしねぇ。心が壊れているんじゃないか?」
「あんなのに任せて、大丈夫なんかね……」

 ――いつの間にか領民達は、彼を残忍酷薄な辺境伯と呼ぶようになっていた。

(たとえ忌み嫌われようが、俺のやるべきことは変わらん……)

 クロディオは誰とも深い仲になることなく、ただひたすらに己の使命をこなしたのだった。
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