聖女天使を苦しめた国に、天罰を
(わたし、守りたい。そう、思うからこその……暴走……)

 世間ではそれを、執着と呼ぶのだが――。
 そうした感情に疎いセロンは、神馬のもふもふとした毛並みに顔を埋めながらぼんやりと考える。

(たとえ、大好きな人だとしても……。1人ぼっちで静かに暮らせと言われるのは……。嫌、かも……)

 クロディオ、ペガサス、ルセメル。
 彼らのぬくもりを知ってしまったセロンはもう、1人ぼっちには戻りたくないと強く願っている。
 こんな状況でそんなふうに辺境伯に命じられたら、天使は壊れてしまうかもと恐れていた。

(みんなと一緒に、いたいから。我慢……)

 天使はペガサスの背中に両腕を回す力を強めると、ゆっくりと目を閉じた。

『聖なる力を使って、疲れたのかい?』
「うんん……。クロディオの戦う姿。もっと近くで、見たくなるから……」
『だったら、僕と目を合わせていればいいじゃないか。このままだと、眠ってしまいそうだよ』
「ん……平気……」
『大丈夫じゃないから、提案しているんだ。意識を失えば、翼も消失してしまう。危ないよ。ボクの背中に乗って』

 優しい言葉で諭すペガサスの声を耳にした天使には、神馬を頼りたくても頼れない事情がある。
 瞳を潤ませたセロンは、獣に問いかけた。
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