聖女天使を苦しめた国に、天罰を
 クロディオはいつだって、自分のそばにいるのだ。
 手紙を愛を認める機会など一生訪れないと、わかっていても――。
 先程まで憂鬱だった気持ちが、彼のことを考えるだけで吹き飛んでいくのを感じる。

(クロディオとわたしが、信頼し合えない関係だったら……。この手紙を手に、ぞ国まで飛んで行っていたかも……)

 セロンはもしもの可能性を脳裏に思い浮かべ、すぐさまその考えを棄却する。

(彼がわたしを、大切に慈しんでくれるから……)

 婚約者になってほしいと懇願しておきながら、最終的に天使ではなく妹を選んだフラティウスに今さら会いたいと手紙を寄越されたところで――セロンは何があっても絶対に、王太子の手を取るつもりなどなかった。

(あの人からどんなに求められたとしても、わたしは、クロディオのそばを離れない)

 天使は頭の中で不躾にもフラティウスとクロディオを比べ、後者を選んだ。
 その後膝上に置かれた手紙を手に取り、勢いよくそれを破り捨てようとした。
 しかし――それを阻むものが現れる。

「何をやっている」

 不機嫌そうに低い声を紡ぎながら姿を現したクロディオを見捉えたからだ。
 セロンはぴたりと、その指の動きを止めた。
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