聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「お帰り、なさい。クロディオ……」
「ああ。今は、挨拶などどうでもいい。質問に、答えてくれないか」

 天使が彼の帰宅を喜び、口元に微笑みをたたえたからだろう。
 一言目よりは棘が抜けたが、険しい表情のまま諭されてしまう。
 セロンは不思議そうに、彼の顔色を窺った。

(怒ってる……?)

 クロディオは以前、フラティウスがセロンに宛てた手紙の内容を確認する必要はないと、自分を遠ざけていた。

(許可を得ず勝手に、中身を見たから……)

 悲しそうに眉を伏せた天使は再び、無言で不機嫌の元となった手紙を引き裂こうと試みる。
 だが、その手はクロディオが手首を掴んだことによって阻まれた。

「この手紙……」
「記憶から、抹消しろ」

 セロンは彼に命じられなくても、最初からそのつもりだ。
 残忍酷薄な辺境伯の名に相応しき氷のような瞳で見下された天使は、彼に向かってしっかりと頷く。
 その後、申し訳なさそうに視線を逸らした。
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