聖女天使を苦しめた国に、天罰を
『うぅ。目が回る……』

 ペガサスはこの特徴的な音に不快感を露わにすると、床に倒れ伏した。
 そんな神馬の様子を見捉えたセロンは、身体を優しく手櫛で撫でつけようと手を伸ばす。
 しかし、こちらが獣に触れるよりも――クロディオがセロンを抱き上げるほうが早かった。

「揺らすぞ」
「ん……」

 天使を落とさないようにしっかりと支えた彼は、ドレスへ付着した紙吹雪を上下に揺すって床の上に落とす。
 強い力で激しく揺れたせいか、セロンはぐるぐると目を回してしまう。

「ぐわんって、する……」
「よく、頑張ったな」

 己の胸元に寄りかかって脱力した天使の姿を目にしたクロディオは、口元を優しく綻ばせてセロンを褒める。
 少女はこてりと首を傾げ、彼に問いかけた。

「わたし、偉い?」
「ああ。君がまさか、手紙を破り捨てるとは思わなかった」

 クロディオは天使に触れ、機嫌をよくしたらしい。
 感慨深そうに言葉を紡いだあと、セロンを抱き寄せた。

「あいつを選ぶなら……。俺は鬼と化していただろう……」

 彼の呟きを耳にしたペガサスは、具合が悪いなど言ってはいられないのだろう。
 すくりと立ち上がると、険しい表情でクロディオを睨みつけた。
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