聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「バズドント伯爵令嬢の元へ、案内してあげるよ」
「駄目……」
「どうして? 自分で、渡さないと……」
「わたし、外に出たら。本当は……」

 セロンは悲しそうに眉を伏せ、俯く。
 そんな天使の姿を目にした彼は、少女の不安を取り除こうと顔を覗き込み――。

「ああ、なんて綺麗な……熟した桃のような、おいしそうな瞳をしているんだ……」

 恍惚とした表情を浮かべたあと、こちらを安心させるように微笑んだ。

「何か、理由があるんだね」
「うん……」
「そうか。よくわかった」
「じゃあ……」
「交換条件だよ。それを届ける代わりに、僕の願いを叶えてほしい」

 唇が触れ合いそうなほど近い距離に、年頃の異性と近づくなど初めての経験だったからだろう。
 セロンはどこか気まずそうに視線を逸したが、彼はそれを許さなかった。
 何度も天使の瞳を追いかけてしっかりと目を合わせた王太子は、懇願する。

「――婚約者になってくれないか」

 灰色の目に嘘偽りのない感情を宿すと、真剣な眼差しで天使を求めた。
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