聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「わたし、が……? どう、して……」
「君の神々しい姿を見た瞬間、ピンと来たんだ。僕の妻は、君しかいないって……」

 まさか今日、初めて出会ったばかりの異性から求婚されるなど思っても見なかったのだろう。
 困惑の色を隠せぬセロンに、彼は瞳を潤ませて懇願する。

「でも、わたし……。聖女、天使で……」
「心配いらないよ。僕はこの国の王太子だ。君を神殿になんて――奪わせない。守ってみせると、誓うから」

 王太子の告白を受けた少女は、疑心暗鬼に陥った。

(この人は本当に、信じられる人……?)

 甘い言葉を囁き、聖女天使を手中に収めようと目論む悪人の可能性も否めない。

「君だって、よくわかっているはずだ。このまま1人でいたら、危険だって……」
「だけ、ど……」
「どうか、僕を選んでほしい」
「わたし、は……」

 天使は今すぐ王太子の手を取りたい気持ちでいっぱいになりながらも、最後の一歩を踏み出せなかった。

(この手を取って。殿下と一緒に暮らす資格、わたしには……ない……)

 バズドント伯爵家の娘セロンは、存在してはいけないからだ。
 少女は自らの名を名乗ることもできず、後退る。
 その直後――。
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