聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「ルセメルから、聞いた。今、ね? 残忍酷薄な辺境伯と、みんなが呼ぶのを止めたって」
「セロンのおかげだ」
「うんん。わたし、何もしてない」

 セロンは首を左右に振ると、金色の瞳をじっと見上げる。
 彼の美しい目に見惚れた天使は、明るい声を発した。

「いつか。みんなで、笑い合えると、いいね」
「ああ……」
「そのため、にも……。早くあの国、滅ぼす?」

 辺境伯の瞳には、さまざまな感情が浮かんでは消えていく。
 己に対する恋慕。
 フラティウスに対する嫉妬心や憎悪。
 どうしてそんな思いをいだいているかわからぬ、罪悪感まで――。

(クロディオの瞳。キラキラ。万華鏡、みたい……)

 セロンがうっとりと瞳を潤ませるながら問いかければ、彼はぎこちなく左右に首を振った。

「そうしたいのは、山々だが……。こちらにも、準備が必要だ。すぐには、難しい……」
「わたしとペガサス。待ちくたびれた……」
「もう少しだけ、大人しくしてくれ」
「いつまで……?」
「そう遠くない未来には、実行できるはずだ」

 セロンはクロディオの言葉を信じる。
 疑わないと、決めたから。
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