聖女天使を苦しめた国に、天罰を
(もう一度、やり直さなければ!)

 脇目もふらずに王城へ戻った彼は、婚約者の姿を探し当て――勢いよく、声を張り上げた。

「ルイザ・バズドント伯爵令嬢! 君との婚約は、今日を持って破棄とする!」
「な、何を言っているの!? あたしは嫌だって……!」
「君の意見なんて、どうでもいい!」
「なんて自分勝手なの……!?」

 ルイザと顔を合わせてすぐに婚約破棄を宣言したフラティウスに、迷いはない。
 彼女は必死にその決定へ抗う素振りを見せたが、王太子が婚約者に向ける視線はいつまで経っても冷ややかであった。

「ああ。そうだ。僕が誰にでも優しくしていたのは、ある目的を遂げるためだった。もう、神殿で暮らす聖女天使達なんて……。どうでもいい……」
「何を言って……」
「僕はあの子だけがいれば、充分だ。クロディオに保護された、僕だけの聖女天使……」

 フラティウスはうっとりと瞳を潤ませ、脳裏に愛する聖女天使の姿を思い浮かべる。
 こうなってしまえば、どれほど目麗しい容姿を持つルイザであろうとも――彼にとっては道端に生えている雑草のようにしか見えなかった。
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