聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「瞳に、涙が滲んでいる」
『ボクのせいだって、疑っているのか!? 違うよ。セロンのためを思って言っただけで、泣かせるつもりは――』
「ん……。悲しいことが、あった。でも、今は平気……」

 セロンは神馬の言い訳をあえて無視すると、クロディオに心配はいらないとしっかりと頷いた。
 天使を優しく抱きしめた彼は、ペガサスに凄む。

「ペガサス。よく、覚えておけ。君が神聖な存在であるからこそ、俺は見逃してやっているんだ。人間であれば――」
『はいはい。わかったよ。もう、邪魔はしない。セロンも気を許しているみたいだし……。どうぞ、お幸せに』

 身の危険を感じた神馬はおざなりな様子で呆れた声を出すと、勝手にしろと言わんばかりに目を伏せた。

「ペガサス。とっても、反省中。クロディオ……」
「ああ。行って来い」

 彼の許可を得たセロンは、クロディオの胸元から飛び出ると――ペガサスを細い両腕を使って抱きしめた。
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