聖女天使を苦しめた国に、天罰を
『セロン。なんだか、嫌な予感がする』
「どんな……?」
『さぁ……。そこまでは、わからないけど……』
「どうした」

 その様子をどこか呆れたように見つめていた神馬が、窓の外をじっと見つめる。
 抽象的な危機を知らせるペガサスの声に、セロンが困惑していた直後――その異変は、訪れた。

「あのね。ペガサスが……」
「辺境伯! 大変です! 国境で、ルユメール王国の王太子が! 聖女天使を返せと騒いでおります……!」

 使用人と思わしき見慣れぬ男性が、執務室に姿を見せる。
 その人物から、フラティウスの話題が出てきた。
 セロンは驚きで目を開き、近くにいたクロディオの顔色を伺う。

「放っておけ。そのうち、大人しくなるだろう」
「敵国の兵士は、殿下を抑えているようなのですが……いつまで経っても、抵抗を続けており……。聖女天使が駄目なら、辺境伯に会いたいの一点張りでして……」

 男性の報告を受けた彼は、明らかに不機嫌な様子で眉を顰めている。
 クロディオと出会ったばかりの時は、セロンもその表情を目にして怯えの色を隠せなかったが――。
 彼と信頼し合った今は、心を乱すなどあり得ない。
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