聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「わたし、空から見てる」
「危険だ。やめておけ」
「あの人、なんの力も持っていない。ただの人間。クロディオ、とっても強い。空にいる限り、わたしは安全……」
「戦争を影でサポートする時とは、わけが違う。言葉の暴力で、君が傷つく姿はみたくない」

 クロディオは彼女の同行を嫌がっていたが、ここで引くほどセロンも馬鹿ではなかった。
 天使は桃色の瞳に確かな決意の炎を宿らせ、自らの嘘偽りのない意思を口にする。

「わたしの一番、クロディオだから。ほかの人に、何を言われても、平気」
「セロン……」
「ずっと、一緒にいるって、言った」
「それは……」
「仲間外れ、しないで。ね?」

 天使の懇願を受けた彼は、拒否などできなかったようだ。
 クロディオは渋々了承すると、セロンに向かって手を差し出す。

「わかった。行こう」
「うん……!」

 天使は満面の笑みを浮かべて彼の手を取ると――ペガサスとともに、領城から飛び出した。
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