聖女天使を苦しめた国に、天罰を
フラティウスの一方的な懇願を上空から冷めた目で観察していたセロンは、領城に向かって歩き出すクロディオを慌て追いかけた。
(あの人は、ルイザの婚約者になったはず……。今さら、間違いに気づき、わたしを求めるなんて……)
天使は王太子の愚かな行いを目にして、嫌いになることはあっても好意をいだくことはない。
(早くクロディオと、話をしなくちゃ……)
セロンは焦りの色を隠せない様子で、国境が完全に見えなくなるのを待ち続けていた。
『あれは酷いね……』
――そんな中。
人間達の醜い言い争いを天使の隣で見守っていたペガサスが、呆れたような声を上げる。
セロンと神馬は純白の翼を広げて風を切って並走しながら、言葉を交わし合った。
『セロンがあいつを好きになった理由が、理解できなかったけど……。あんな奴より、クロディオのほうがよっぽどマシだ。ボクも、応援するよ』
「クロディオ。仲良く、なれそう?」
『善処する』
あれほど辺境伯と天使の仲を祝福できないと苛立っていた神馬が、コロッと意見を変えた。
フラティウスと比べれば、誰の目からみても王太子が自分にふさわしくないのは明らかだ。
そうした反応を取るのも無理はないと実感したセロンは、ほっとした様子でポツリと呟く。