聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「わたし。あのまま、あの人の手。取らなくて、本当に、よかった……」
『そうだね。どれほど君が、魅力的な女性であったとしても……。婚約者がいるのにセロンを求めるなんて、ろくな男じゃないよ』
「クロディオが、あの人を追い返してくれなかったら……」
『そんな恐ろしい未来を、考える必要はないよ』
「うん……」

 ペガサスとの会話に集中していれば、あっという間にクロディオは騎士達を伴って領地内へ脚を踏み入れる。
 ここまでくれば、敵国の人間達から加害される危険性はないだろう。

「セロン」

 名前を呼ばれた天使は、喜びを隠せない様子で愛する人の元へ舞い降りた。

「クロディオ……!」

 セロンは背中の翼を消失させると、彼の腕の中へ飛び込んでいく。
 その様子を偶然目にした騎士達は口元を緩め、微笑ましそうに2人を見守っていた。

「あのね。いっぱい、ありがとう……!」
「俺は何も、していないが……」
「うんん。ペガサス、わたし達の仲。認めてくれた。これはとっても、凄いこと!」
「ふむ……。あいつと言葉を交わし合った時間は、無駄ではなかった」

 先程まで不機嫌な様子を隠さずにフラティウスと対峙していた姿は、どこへやら。
 穏やかな表情を浮かべた彼は、最愛の天使を優しく抱きしめた。
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