聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「あいつは想像通りの、ろくでもない男に成長したようだ……」
「ん……。クロディオのところまで、逃げてきた。わたしの判断、間違ってなかったみたい……」
「ああ。神には、感謝しなければならん」

 クロディオが柄にもなく十字を切り、天に祈りを捧げる。
 その様子を目にした天使は彼の胸元からぱっと顔を上げると、こてりと首を傾げて懇願した。

「早く、あの国。滅亡させよ?」
「そうだな。こちらへ攻め入られる前に、奇襲をしかけるべきだ」

 クロディオの同意を得たセロンは、嬉しそうに口元を綻ばせる。
 だが、それに待ったをかけるものがいた。

『セロン……。君が恨みをいだいているのは、神殿とあの男だけだろう? ただあの地で生まれ育った人間まで、痛めつける必要はないんじゃ……』
「そう、なの?」

 呆れた声を上げるペガサスの言葉を耳にしたセロンは、数日前に読んだ本の内容を脳裏に思い浮かべる。

「わたし、本で読んだ。悪い人がいる国、1人残らず滅びるべきだって」
『なかなか過激な本を、暇つぶしに読んでいたようだね……』
「こういう思考、あんまりよくない?」

 神馬に難色を示されたセロンは、クロディオに問いかける。
 彼は自分の考えが間違っていれば正し、よりよい方向へ導いてくれると信じていたからだ。
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