聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「今すぐ、近衛兵を呼べ!」
「大事にするなと言ったのが、聞こえなかったのか!?」
「弓や拳銃で、彼女の翼を――」
「やめろ! あの子は未来の王太子妃だぞ!? 傷つけるなんて、僕が許さない!」
「しかし……!」

 舞踏会の会場では、聖女天使が現れたと大騒ぎになっていた。
 しかし、どれほど人間が慌てふためこうとも――王城の喧騒を背に大空へ逃げ出したセロンには関係のない話だ。

(どうしよう。このまま、帰ったら。かあさまに、怒られる……?)

 妹とだけ会話をしてさっさと帰るつもりが、たくさんの人に背中へ翼を生やしているところを目撃されてしまった。
 顔を覚えられていた場合、このまま行方を晦ましたところで捕まるのがオチだった。
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