聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「どうしたの? わたし、また。変なこと、言った?」
「いや。その逆だ」
「なぁに?」
「セロンの笑顔は、あまりにも破壊力がありすぎて……。誰にも見せたくない」
「わたし、の?」

 小さな身体が潰れてしまいそうなほど強い力で抱きしめられたセロンは、こてりと首を傾げて不思議そうに問いかけた。

「ああ。腕の中に閉じ込めたいと思った。これでは、あの男と同じだな……」
「どうして、そう思うの?」
「君に一方的な想いを、ぶつけている」
「うんん。違うよ。わたしからも。好きって気持ち、溢れて止まらない……」

 天使は彼の胸元を抱きしめると、頼まれたって離れたくないと主張するように頬を寄せる。
 愛する人のぬくもりを思う存分堪能しながら、セロンは素直な気持ちを吐露し始めた。

「あの人の言葉。何を言われても、響かなかった。それは、あなたが……。わたしに、優しく接してくれたおかげ」
「セロン……」
「必要だって、そばにいろって。言ってくれなかったら。わたし、あの時……コロッと、寝返っていたかも……」
「駄目だ。何があっても、離さない。絶対に……」
「ん……。わたし、クロディオに、そう言ってもらえて……。とっても、幸せ……」

 天使はうっとりと頬を紅潮させると、満面の笑みを浮かべて彼に抱きつく力を強めた。
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