聖女天使を苦しめた国に、天罰を
(みんなも、いつか。素敵な人に、出会えると、いいな……)

 セロンは空を見上げ、同胞の姿を思い浮かべる。
 天使はいつだって、願っている。
 幼い頃から神殿で管理されて虐げられて暮らす少女達が、大好きな人と巡り合える日がくることを――。

(その、ためにも。あの人には、罰を与えなくちゃ)

 セロンは瞳の奥底にフラティウスに対する憎悪の感情を宿らせると、クロディオにお伺いを立てた。

「わたし、も……自分の力で、大嫌いな人を傷つける力……。つけたほうが、いい?」
「いや。そんなもの、必要ない。俺が君の分まで恨みを込めて、剣を振るえばいいだけの話だ」
「クロディオに、任せきりは……」
「セロンだって、俺と一緒に戦っているだろう」
「わたし、も?」
「ああ。君が加護を授けてくれるからこそ、俺は命を散らさずに済んでいる」

 彼は今さら力をつけなくても、現状維持で充分だと告げた。
 聖女天使として聖なる力を使えるセロンは、特別な存在だ。
 身体を鍛えるために怪我などしては困ると、小さな身体が傷つくことを恐れているのかも知れない。
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