聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「特別な行いなど、必要ない。今までと、同じように――セロンにしかできないことを、してほしい」
「ん。それが、クロディオの望み、なら……。わたし、今まで通り。加護、使う」
「ああ。そうしてくれ」

 それが何よりも嬉しいと感じた天使はルユメール王国強襲に向けて決意を新たにしたあと、辺境伯と手を繋ぐ。
 指先を絡め合い、離れないように――強く。

(クロディオの手……。あったかい……)

 氷のように冷たい目をした彼の暖かなぬくもりを感じたセロンは、うっとりと瞳を潤ませ、幸福感に酔い痴れる。

(こんな日が、いつまでも続けばいいのに……)

 天使はそんな願望を胸にいだき、彼に身体を預けていると、どこからともなく叫び声が聞こえてきた。

「銀の髪に桃色の瞳……! あの小さな少女は! 聖女天使だ!」
「パロニード辺境伯! よかったらお嬢さんと一緒に、露天商を見ていかないかい?」
「いいや! こっちでおいしい果物に舌鼓を打つのも、悪くないぞ!?」

 露天商達が2人を指差し、嬉々として迎え入れる。
 その姿を目にしたペガサスは、呆れた声を上げた。
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