聖女天使を苦しめた国に、天罰を
『人間は本当に、騒ぐのが好きだね……』
「神馬様も! どうぞこちらに!」
『ボクも、かい?』
「我がパロニード辺境伯へのご降臨、感謝いたします……!」
『それほどでも……』

 神馬はまさか、自分まで歓迎されるとは思わなかったのだろう。
 目の前でひれ伏し感謝を伝える人々に気分をよくした獣は、恐縮しながらも胸を張って大嫌いな人間達と戯れる。

「ペガサスも、なんだか楽しそう」
「ああ。ここまで騒ぎになるとは、思わなかった」
「クロディオも。今日は、嬉しい?」
「そうだな。1人では、きっと。不愉快で堪らなかったが――」
「ん……」
「セロンと一緒なら。領民の些細ないざこざすらも、愛おしく思える。こんな穏やかな気持ちになったのは、両親が生きていた頃以来だ……」

 彼は晴れやかな表情を浮かべると、天高く燦々と輝く太陽を眩しそうに見上げた。

「クロディオ、笑ってる……」

 クロディオの柔らかな笑みを目にしたセロンが呆然と呟けば――それを耳にした人々が、嬉々として大声を上げて喜びを露わにする。
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