聖女天使を苦しめた国に、天罰を
7・聖女天使を虐げる国に、天罰を
(こんなはずじゃ、なかったのに……! なんで!? どうしてよ!?)
フラティウスから婚約破棄を宣言されたルイザは、怒りを隠しきれない様子でバズドント伯爵家へ帰宅するため、馬車に揺られていた。
(これも全部、あの子がパロニード辺境伯なんかに逃げ込んだせいよ……!)
銀の髪と桃色の瞳。
背中に翼を生やして聖なる力を発現できる野良聖女天使など、異母姉以外に存在するはずがない。
ルイザはどれほど歯ぎしりをしても鎮められない怒りに全身を焼かれ、どうにかなってしまいそうだった。
(こんなもの……!)
――背中に背負っていた偽物の翼を剥ぎ取ると、勢いよく羽根をもぎとった。
車内には羽毛が、ひらひらと舞い降りる。
(あの女さえ産まれて来なければ……! あたしはバズドント伯爵からも、愛してもらえた! フラティウス殿下だって、婚約破棄を宣言しなかったはずよ!)
セロンに憎悪を滲ませる妹は、気づいていなかった。
本来停車するはずのない場所で馬車が止まり――勢いよく外側から開け放たれた出入り口に、修道服を身に纏った神官達がわらわらと乗り込んできたことに。