聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「ぎゃあ! 落ちる!」

 まさか翼を持たぬ自分が天高く舞い上がる羽目になるなど、思いもしなかった。
 色気のない悲鳴を上げて己を抱きかかえている聖女天使に縋りついて怯えるが、彼女達もそれに構っていられるほど余裕があるわけではなかった。

「結界を壊して!」
「無茶言わないでよ! 人間は、空を飛べないの!」
「早く!」

 ルイザは聖女天使に憎まれ口を叩きながらも、渋々彼女達に協力した。

「ああ、もう! ほんとにあんた達って、憎たらしいから大嫌い……!」

 仕方なく両手を伸ばし、結界に触れる。
 すると――少女達を閉じ込めていた障壁が、粉々に砕け散った。

「私達は、自由よ!」
「どこにでも、羽ばたいていける……!」
「ちょ、ちょっと! 待ちなさいよ! あたしは!?」

 少女達は一斉に空へ向かって翼をはためかせ、地上が見えなくなるほど浮上する。

(こんなところから、叩き落されでもしたら……!)

 死を覚悟して叫べば、ルイザが持ち上げていた女性はなんてことのないように問いかけた。
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