聖女天使を苦しめた国に、天罰を
(かあさまとルイザに、言えばいいのに……)

 天使が舞踏会の海上に向かったのは、義母の命令に逆らえば何をされるのかわかったものではなかったからだ。

(どうしてとうさまは、再婚なんてしたんだろう……)

 セロンは壁に飾られた実母の姿絵をじっと見つめ、悲しそうに眉を伏せる。

(お母さまが、生きていれば……)

 父親は実母を、娘以上に深く愛していた。
 もしもセロンと引き換えに命を落としていなければ、天使は義家族に虐げられることもなく――実母の庇護を受け、幸せに暮らしていただろう。

(わたしがこうして苦しみ、悲しむ必要も……なかった……)

 天使は膝を抱えて丸まり、瞳を閉じた。

(お母さまに、会いたい……)

 叶わぬ願いを、胸にいだいたまま。

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