聖女天使を苦しめた国に、天罰を

「ちょっと! あんた、殿下に何したの!?」

 父親に怒鳴りつけられてから、数日後。
 セロンの元へ、今度は妹がやってきた。

「かあさま、頼まれて……。髪飾り……」
「その話は、母さんから聞いた! これからバズドント伯爵が、あたしに会いに来るって言うのよ!」
「ルイザ、に……?」
「そうよ! 殿下は、あたしと同姓同名の聖女天使を探しているんですって!」

 ルイザにそう叫ばれた姉は、真っ先に王太子と出会った時の光景を思い出す。

(ルイザの名前だけ、あの人に伝えたから……)

 セロンがルイザに髪飾りを渡すように告げた結果、妹がそれを舞踏会で受け取ったのは明らかだ。
 頭には見慣れた髪留めが、しっかりと身につけられているのだから……。

(殿下、が……。ルイザに直接、あれを渡していたら……。そんな勘違い、しない、はず……)

 姉が不思議そうに眉を顰めていれば、妹の口から再び不可解な言葉が飛び出した。

「あたしは今日から、聖女天使よ!」

 ルイザは普通の人間だ。
 聖女天使は、なりたいと思い立ってなれるものではない。

(そんなの、無理に決まってる……)

 しかし……。
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