聖女天使を苦しめた国に、天罰を
(許さない。ルイザも、わたしを虐げるかあさまも。地下室に閉じ込めた、とうさま。見る目のない、王太子も……)

 全身が焼き焦げてしまいそうな憎悪をいだいて空を飛び回る少女は偶然、隣国との国境で剣を振るう騎士達の姿を見捉えた。

「ルユメール王国の勝利を、殿下に捧げる!」

 自国の軍は敵国に戦争で勝利したようだ。
 耳を劈く咆哮を上げそれを喜んでいる。

(みんな、いなくなってしまえ。消えてしまえばいい……)

 負の感情に支配された天使がそこに視線を向けたのは、偶然だった。
 敵国の人々が何度も地に伏せようと諦めずに立ち上がり――自国の騎士達へ向かって必死に剣を振るう姿。
 それを視界の端で確認したセロンは、桃色の瞳を潤ませてぼんやりと考えた。

(わたしもあんなふうに……。ルイザに立ち向かえば、よかったの……?)

 誰がどう見ても劣勢に追い込まれているはずの男性は、何度も果敢に自国の騎士へ挑む。
 天使にはそれが、不思議で堪らなかった。

(何度やっても、無駄……なのに……)

 あの男性のように。
 倒れても、傷ついても。
 挑み続けるその覚悟が足りなかったから。
 少女は今、ここにいる。
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