聖女天使を苦しめた国に、天罰を
(自分で考えろって、言われるのかな……)

 セロンが恐る恐る問いかければ、辺境伯は真顔で、はっきりと宣言した。

「俺の、そばにいろ」

 金色の瞳が、天使を射抜く。
 それは狙った獲物に噛みつく機会を伺う、獰猛な獣のようだった。

「それ、だけ……?」

 少女はその視線を受けても物怖じすることなく、こてりと首を傾げた。
 クロディオが事前にセロンに対して好意的な内容を口にしたため、怯える必要がなかったからだ。

 そんな天使の反応を目にした辺境伯は、どこか遠くを見つめながら告げた。

「今のところはな。戦争が勃発すれば、嫌でも君の力を借りる羽目になる」

 セロンは今まで、なぜ彼が自身を受け入れたのか不思議で堪らなかったが――。

(利益って、聖なる力のことだったんだ……)

 戦地で初めて使った天使の加護に利用価値を見出したからこそ、自分が辺境伯に連れてこられたのだと気づいたからか。
 セロンは明らかに落胆の色を隠せない様子で、肩の力を抜いた。

(わたし、この人に……。どうして欲しかったんだろう……?)

 クロディオから視線を逸らした少女は、戦場での出来事を脳裏に思い浮かべる。
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