聖女天使を苦しめた国に、天罰を

「セロン様って、猫ちゃんみたいですね!」

 怯えるセロンの身ぐるみを剥いで身を清め、清潔なドレスを着せてから清潔な布を使って髪に付着した水気を拭き取っていたルセメルは、己に笑顔でそう告げた。

「ね、こ……?」
「はいっ。警戒心の強い、野良猫さんです!」

 地下室で暮らしていた天使は、猫を直接目にした覚えがなかった。
 だから、そんな指摘を受けてもうまく想像ができない。

(どんな、の……?)

 セロンが三角形の耳と、揺れる長い揺れる尻尾を思い浮かべられないなど、知りもせず――。
 困惑する少女の姿を観察していた侍女は、満面の笑みを浮かべて告げた。

「そんなに心配しなくても、大丈夫ですよー。わたしはセロン様の、味方ですから!」

 そんな天使の様子を目にした彼女は、自分が傷つけられるかも知れないと怯えているからこその反応だと受け取ったのだろう。
 ルセメルは明るい声で続ける。

「旦那様を恐ろしいと感じるのは、当然ですよ! なんてったって彼は、残忍酷薄な辺境伯ですからね!」
「酷い、人……?」

 聞き馴染みのない単語を自分のわかる単語に変換してから繰り返せば、侍女は歌うように、噛み砕いて説明を始めた。
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