聖女天使を苦しめた国に、天罰を
『あんたって、ほんとに愚図ね!』
『私達の言うことが聞けないんだったら、追い出してやってもいいんだよ!?』

 ここにはセロンを罵倒する妹の姿や、無理やり己を外へ連れ出そうとする義母の姿など存在しないからだ。

「気安く触れるな」
「ええー? 私のせいですか? 今のは旦那様の……」
「ルセメル」
「はぁい。ごめんなさい……」

 セロンが全身を小刻みに震わせて怯える姿を気の毒に思ったのか。
 クロディオの一喝により、侍女は渋々彼女の小さな身体から手を離した。

(守って、くれた……?)

 天使は不安そうに視線をさまよわせたあと、ゆっくりと身体を起こして彼を不思議そうに見つめる。

「俺はこれから、雑務がある。望むものがあれば、用意しよう」

 そんな天使の姿を金色の瞳で見下したクロディオは、優しい口調で少女に問いかけた。

(わたしの、ほしいもの……)

 暇を潰すための道具としてセロンが真っ先に思い浮かべるものは、一つしかない。
 ぼんやりと彼を見上げていた天使は、ポツリと願望を口にした。
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