聖女天使を苦しめた国に、天罰を
(わたしはきっと、この人に……歓迎されていない……)

 一度物事を嫌な方向に考えてしまえば、止められなかった。
 セロンの脳裏には次々と過去の光景が思い出されては、消えていく。

(いつか、義家族みたいに……。虐げて、くるかも……)

 次はないと脅してきた父親。
 召使のように扱う義母。
 少しだけ気になっていた異性を、横から奪い取った妹――。

(痛いのも、苦しいのも。つらいのも。もう、うんざり……)

 どれほどの苦痛をいだいても我慢してここに居座ったところで、傷つくだけだ。
 そう学習した天使は――。
 クロディオの人となりをじっくり観察する前に決意してしまう。

(頃合いを見て、逃げよう……)

 侍女に着替えさせられた、薄紫色のドレスが汚れるのも厭わずに。
 少女はストンと床の上に腰を下ろすと、膝をかかえて丸まった。

「地べたに座るな」

 そんな少女を見かねたクロディオは、嫌そうにセロンへ命じた。
 しかし、天使は聞かない。
 伯爵家の娘であるにもかかわらず、人と異なる力を持って産まれたセロンは人間として生きることを許されなかったからだ。
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