聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「椅子がある。そこに座れ」

 椅子や机、ベッドと行った生活に必要なものなど、一度も与えられたことがない。
 ただ広いだけの、本が山積みになった部屋で生きてきた天使にとって――家具の上に座って人間らしい扱いを受けると言う概念など、存在しなかった。

「何度言えば……」

 クロディオはどうにかして、少女を椅子の上に座らせられないかと考えを巡らせていたらしい。
 しかし、呆れたように語る彼の野望が叶えられることはなかった。

「お待たせしましたー! セロン様! 10冊ほどお持ちいたしましたので、この中からお好きな物を……。あら?」

 ――クロディオとの間に流れる険悪な雰囲気をぶち壊す、明るいルセメルの声が聞こえてきたからだ。
 天使はぱっと顔を上げ、両手いっぱいに本をかかえる侍女の元へ駆け寄る。

(さっきまでは、凄く苦手……。だったけど……。今は、この子が、救世主に見える……)

 セロンは侍女の手にした本の背表紙に視線を巡らせ、その中からある1冊の本を指差し欲しがった。
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