聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「旦那様! 今の、見ました!?」
「俺は仕事が忙しい」
「聖女天使が! 私に笑いかけてくださったんですよ!? ああ、もう! なんで見てないんですか!?」
「二度も言わせるな」
「こんなに可憐で、かわいらしく、小動物のような女性が……! 優しく口元を綻ばせると、まるで女神のように神々しく……!」
「騒がしいぞ」
「名だたる画家をお呼びして、姿絵を残すべきです!」
「そんなくだらんことに、金は使えない」
「旦那様……!」

 ルセメルは声を荒らげて主を非難したが、辺境伯は駄目の一点張り。
 どれほど駄々をこねられようとも、侍女の提案を受け入れる気はないらしい。

(侍女って……。雇い主の命令、絶対じゃ……ないんだ……?)

 ――セロンはその様子を、不思議そうに観察していた。
 義母や妹から聞いていた話と、180度異なる光景が目の前に広がっているからだ。

(わたしも……。あんな風に。かあさまと、ルイザ……。仲良し、出来たら……)

 これほど苦しくつらい目に合わなくて済んだのではないかと過去に想いを馳せたセロンは、そうして脳裏に浮かんだ言葉を否定するように首を振った。
< 48 / 245 >

この作品をシェア

pagetop