聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「騒ぐ暇があれば、彼女を椅子に座らせろ」
「へ? セロン様!? そこは、本を読むところじゃないですよ!?」
「わたし、ここがいい」
「せめて、布を敷きましょう? ドレスが汚れてしまいます……!」
「ルセメル。俺の命令が、聞けないのか」
「ですが、旦那様……」

 2人の間で板挟みになった侍女は、おろおろと視線をさまよわせて狼狽える。

「麗しき聖女天使を無理やり抱き上げるなんて……! そんなの、私には無理です……!」
「使えんな……」

 彼は渋々椅子から立ち上がると、コツコツと足音を響かせてセロンに迫った。

 ただでさえ2人の間には、30cm近い身長差があるのだ。
 少女が座っている状態では、その差はさらに広がり――セロンは恐怖で震え上がった。

(叩かれる……っ)

 再び床の上に全身を震わせて丸まった天使は、胸元に1冊の本を抱きかかえて怯えた。

(あ、れ……?)

 しかし、いつまで経っても痛みはやってこなかった。

(悪い人じゃ、ない……?)

 セロンは恐る恐る、上半身をゆっくりと起こして彼の姿を見上げる。
 すると――。
 金色の瞳が、どこか苦しそうに揺らいでいると気づいた。
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