聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「テーブルと椅子……」
「抱き上げるぞ」

 目線が逸れたことに気づいたクロディオはこちらに向かって一声かけると、繋いでいた手を離して軽々と天使を抱き上げた。
 そのまま移動した先は、書類が山積みになったテーブルの前に置かれた椅子だ。
 辺境伯はそこへどかりと腰を下ろすと、セロンを膝上に座らせた。

「ルセメル。紙エプロンを寄越せ」
「はい! ただいま!」

 侍女から紐つきの紙エプロンを受け取ったクロディオは、天使の細い首筋にそれをくくりつけてくれる。

(この人は……どうするんだろう……?)

 自分も彼の膝上に立ち、つけてあげたほうがいいのではないかと考えて振り返る。
 しかし、こちらが気を回す必要はなかったらしい。
 辺境伯は何事もなかったかのように自らの首にそれを巻きつけると、セロンにカトラリーを手渡した。

「足りなければ、言ってくれ。用意させよう」
「これ、2人分……?」
「ああ。そうだが……。全部食べても構わないぞ」
「4分の1くらいで、平気」

 鶏の照焼が丸ごと1羽、カップに注がれたオニオンスープ、お皿いっぱいに乗せられたみずみずしいサラダ、焼き立てのフランスパン――。
 見ているだけでもお腹いっぱいになってしまいそうなほどに豪華な食事を目にしたセロンは、ルセメルが小皿に取り分けてくれた肉料理を口に運び、嬉しそうな声を上げた。
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