聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「寝るなら俺の腕の中ではなく、湯浴みを終えてから寝台でしてくれ」
「ん……」
「聞いてるか」
「ここが、いい……。それか、床……」
「まだそんなことを言っているのか……。身体を痛める。その辺に寝転がるのだけは、絶対に止めてくれ」

 セロンは飼い主に懐いた猫のように彼の膝の上にまるまると、ゆっくりと目を閉じた。

「仕方ないな……」
「旦那様はすっかり、セロン様の信頼を勝ち取ったみたいですね! 羨ましいです~!」
「騒がないでくれ。彼女が目を覚ましてしまうだろう」

 微睡む意識の中で、セロンは声を落とした彼の囁き声を耳にした。

「君は、誰にも渡さない……」

 さらりと長い銀髪を手櫛で撫でつけられたあと、一房手にとって口づける。

(出会ったばかりの彼が、わたしに好意をいだいてくれるわけがない……)

 天使に対する独占欲を隠すことなく曝け出した辺境伯の声だけを聞いていたセロンは、それが自分の都合のいい夢だと判断し、眠気に抗いきれずに意識を失った。

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