聖女天使を苦しめた国に、天罰を
(あの人は、わたしにおいしいご飯を食べさせてくれた。侍女は騒がしいけど、悪い人じゃない。ここにいたほうが、安全だってわかってる。でも……)

 セロンには、ここにいてはいけないと感じる理由があった。

(呼んでる……。誰かが……。わたしの、こと……。迎えに行かなくちゃ……)

 それが自分の同胞なのか、見ず知らずの人間なのかはわからない。

『セロン』

 何度も、自分の名を呼ぶ少年の声が空から聞こえてくるのだ。

『こっちだよ。ボクに、会いに来てくれ』

 天使は何かへ誘われるように、開け放たれた窓から上空で飛び立とうと試みる。

「だっ! 駄目です! ここ、3階ですよ!? 地面に叩きつけられたら、大怪我をしてしまいます……!」
「ぅ……っ」

 しかし――それを阻止するものが現れた。
 どこからともなく姿を見せたルセメルに背中から抱きしめられ、飛び立てなくなってしまったのだ。

(お、重い……)

 無理にこのまま飛び上がれば、翼が折れてしまう。
 そう危惧した天使はすぐさま羽根を消失させると、侍女の腕の中にすっぽりと収まってぐったりとした様子で身体を預けた。
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