聖女天使を苦しめた国に、天罰を

逃げた天使(クロディオ)

(これから一生、なんの楽しみもない人生を歩み続けるのか……)

 それがとても悲しい、と。
 生きる意味を見失っていた辺境伯を神が不憫に思ったのか。

 ――天から遣わされた天使が戦地に降り立ち、クロディオの手を取った。

 透き通るような銀髪と、女性らしい桃色の瞳を持つ小柄な少女は、名をセロンと言う。

 辺境伯はすぐさま、彼女の出自を調べさせた。
 しかし神殿の管理下にある少女達のリス卜には掲載がなく、ルユメール王国の仮面舞踏会で、1か月ほど前に野良の聖女天使が現れたことしかわからなかった。

(これが、彼女なのか……?)

 クロディオは調査報告書を捲り、その後に起きた不可解な事件に眉を顰める。
 幼い頃から聖女天使を自由にしたいと強い願いをいだいていたフラティウス・べグリーは、神殿の管理下にない聖女天使を保護しようと躍起になったのか――本気で惚れたのかはわからないが、とにかく彼女を求めた。

 王太子はバズドント伯爵家に向かい、聖女天使ルイザ・バズドントと婚約を結んだ。

(セロンなんて名前は、一度も出てこないが……)

 フラティウスとルイザが婚約者となった日に、セロンはクロディオの元に現れた。
 関係がないとは、言い切れないだろう。
< 66 / 245 >

この作品をシェア

pagetop