聖女天使を苦しめた国に、天罰を
(俺は彼女に、好意をいだいているのか……)

 クロディオは信じられない気持ちで、いっぱいだった。
 生涯1人で大剣を振るい続け、この領地を守るつもりの辺境伯は、特別な存在を作るつもりなどなかったからだ。

(命を助けられただけで恋慕をいだき、自分だけのものにしたいと願うなど……)

 自分の中で目覚めた感情すらも受け入れ難いと難色を示した男は、彼女にも普段と変わらぬ厳しい態度で接した。

 ――そのせいでお喋りな侍女とともにクロディオの許可を得ずに姿を晦ますなど、想像もしていなかった。

(連れ去られたのか!?)

 聖女天使と侍女が身体を休めているはずの仮眠室に顔を出した辺境伯は、少女達の姿が見えないとわかった瞬間に強い怒りに支配された。

(俺のものに、手を出すなど……。命が惜しくないようだな……!)

 辺境伯はすぐさま騎士達に捜索を依頼した。
 しかし、その間も急ぎで片づけなければならない仕事が山ほどある。
 セロンが発見されるまで、それらを必死に処理し続けていたのだが――。

(セロン……。どうか、無事でいてくれ……)

 どうにも集中できず、クロディオは心の中で柄にもなく天使の無事を祈り続ける。
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