聖女天使を苦しめた国に、天罰を
(たった1日一緒にいただけでこれほど心を砕くなど、どうかしているとしか思えん……)

 書類から手を離した彼は苦しそうに眉を伏せると、唇の前で両腕を組む。
 その後、セロンの姿を脳裏に思い浮かべた。

(俺は彼女の、どこに惚れた?)

 ――答えは考えるまでもなく、すぐさま導き出される。

(風に揺れるたびに光り輝く銀髪。可憐な花々を思い出させる桃色の瞳。精神的に幼さが見え隠れする口調。穢れを知らぬ、純粋無垢な性格……)

 そのどれもが血に濡れたクロディオには、キラキラと光り輝いて見えて――不相応にも求めるのを、止められなかった。

(たった1日で骨抜きにされるなど、どうかしている。長い時間ともにいたら、おかしくなりそうだ……)

 残忍酷薄な辺境伯と言う名に恥じぬ生き方をするつもりなら――。

『行かないでくれ……!』

 無様にも聖女天使にみっともなく縋り、彼女にそう叫ぶのは明らかに悪手だ。
 騎士達の士気も下がり、いいことなど何も無いない。
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