聖女天使を苦しめた国に、天罰を
(わたしは、ずっと……。翼を生やせる同類と、暮らしたかった……)

 ペガサスの誘いを受け入れるかのように――背中に美しき翼を生やした天使は、胸元から離れて行った神獣の身体にゆっくりと触れる。
 その後、自らの意思で胸元に抱き寄せようとしたが――。

「セロン!」

 聞き慣れぬ男性の声で名を呼ばれ、神馬へ触れる前にその手を引っ込める。

(今の、声……)

 彼が自身の名を呼ぶなど、初めてのことだった。
 なのに――。
 その声音だけは、忘れたくても記憶にこびりついて離れない。

(だって、彼は……)

 何度倒れても再び立ち向かい、剣を振るう彼の姿を目にした。
 そのおかげで、すべてを消滅させてしまいたいと願うほどに強い憎悪に支配されていたセロンは正気に戻り、こうして心穏やかに生きていられるのだから……。

「俺の許可なく、聖女天使を横取りしようとするなど……」

 ペガサスに天使の指先が触れるよりも早く。
 天使の小さな身体を背中からすっぽりと抱きしめ、マントの中に隠した辺境伯は――。

「神の使いの、風上にもおけんな」

 背中に背負っていた大剣を片手で引き抜き、神馬に向けて切っ先を突きつけた。
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