聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「旦那様……!」
「ルセメル。よく粘った。感謝する」
「はい……っ!」

 彼女はもう、無理に起き上がってペガサスと天使の間に割って入る必要はないと認識したからだろう。
 だらりと四肢を土の上に投げ出すと、動かなくなった。

「死にたくなければ、今すぐ去れ」

 セロンが侍女の姿を心配そうに見つめていれば、クロディオはペガサスに怒気を孕んだ声で凄む。

「それが嫌なら……この場で八つ裂きにしてくれる」

 神馬は静かに怒り狂う彼の姿を目にしても、一切動じる様子を見せなかった。
 むしろ、受けて立つとばかりにやる気を見せている。

(止めないと……)

 虚空に手を伸ばしてクロディオの胸元を掴んだ天使は、そのまま身体を覆い隠すマントからひょっこり顔を覗かせる。
 その後、身体を反らせた。
 そして彼を見上げ、懇願する。

「ペガサスを、虐めないで」
「俺の所有物を奪おうとする輩に制裁を加えることの、何が悪い」

 苛立ちを隠せぬ様子で天使を見下した辺境伯の口から紡がれた内容を耳にしたセロンは、不思議そうに問いかけた。

「わたしは、あなたのもの?」
「そうだ」

 天使は何度も、その言葉を脳裏で反芻する。
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