聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「剣を、収めて」
「俺よりも、神の使いを選ぶのか」
「まだ、考え中……」
「いつかはこいつの誘いを受け、天界へ飛び立つのなら――生かしてはおけん」

 怒りを露わにしたクロディオは、本気で神馬を傷つけようとしている。

(それだけは、絶対駄目……)

 ペガサスは神の使いだ。
 天使を傷つけ苦しめるのと同じくらいに、罪が重い。
 クロディオがいだくく獣に対する敵意を落ち着かせるため、セロンは彼の背中に両腕を回した。

「わたし、あなたといる」
「信用できんな」
「もう、逃げない。わたしを大切にしてくれるって、はっきりと認識したから」
「なんだ、それは」

 セロンがなんの前触れもなく、自らの素直な気持ちを吐露したからだろう。
 クロディオはその真意を探るような視線を向けていた。

「お願い。クロディオ」

 しかし、天使に初めて名を呼ばれた辺境伯は、柄にもなく動揺したらしい。
 小刻みに剣を震わせ、驚きで目を見開く。
 そんな金の瞳と視線を交わらせるために、セロンは恐る恐る再び上半身をのけ反らせた。
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