聖女天使を苦しめた国に、天罰を
(これで、ようやく。一段落……)

 天使が小さく荒い息を吐き出せば、事の成り行きを静かに見守っていた辺境伯が訝しげな視線をセロンに向けた。

「セロン。先程から、なんの話をしている。俺は――」
「今日から、この子も一緒。お世話に、なる……」
「なんだと?」

 彼にとって少女の発言は、まさしく寝耳に水だったのだろう。
 納得できないとばかりにセロンへ聞き返したが、天使は不思議そうに首を傾げてクロディオから了承の言葉を引き出そうと試みる。

「駄目……?」
「当たりま……」
「りま……?」
「君には、敵わんな」

 美しい銀色の髪を吹きすさぶ風によって揺らした天使が、桃色の瞳を潤ませて懇願してきたのだ。
 無視など、できるはずがなかった。
 彼はくしゃりと泣き笑いのような表情を浮かべると、天使を抱き上げた。

「待って……。ルセメル、治療、しなきゃ……」
「必要ない」
「でも……」
「放っておけば、直に回復する」
「うんん。癒やしの力、使わせてほしい」
「セロン」

 癒やしの力を人前で見せびらかすなど冗談ではないとでも言いたげに、金色の瞳が訴えかけている。
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